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第9話「新ダンジョン・新敵」

玉京から東へ外れた山間部――“霧爪の廃坑”。
かつて鉱石を掘っていたらしいが、いまはダンジョン化しており、
希少素材と得体の知れぬ魔物が潜む、危険な迷路と化していた。

焔たちは、その調査依頼を受けて、坑道に足を踏み入れる。

「見たことない鉱脈……色、変わってる。これ、腐ってんのか?」

アーチャーが岩肌に目を凝らし、剣士がその一部を刃で叩く。

キィ……ン……

金属音にしては、どこか軋むような響き。

焔はしゃがみ込み、指先で鉱石を撫でる。

「これは……“蝕鋼《しょくこう》”やな。生きとる金属や。
掘り出した後も成長して、周囲の魔力を喰うんや」

「喰うって……武器に使って大丈夫なのか?」

「加工が追いつかんと暴走する。でも、うまく使えば、“自己修復”する素材やで」

進行中、突如として出現する異形の魔物。

腐蝕の胞子をまとい、触れた武器を劣化させる性質を持っていた。

剣士の刃が、音もなく崩れる。

「嘘だろ……!? これ、さっき研いだばっかりだぞ!」

焔がすぐさま飛び出し、崩れた剣を回収。

「……こいつ、蝕鋼を食って育った魔物やな。素材も武器も、片っ端から喰い散らかすやつや」

「どうする!?」

「ちょっと時間くれ。槌は振らへん……火床もない。
けど、素材と対話する時間さえあれば、なんとかなる」

焔はその場にしゃがみ込み、蝕鋼のかけらと崩れた剣を見比べた。

「お前、まだ“芯”は生きとるな……」

指先で金属を撫で、呼吸を合わせる。

シュゥゥゥ……ッ

魔力を送り、蝕鋼の“喰う性質”を逆手に取り、破片同士を自ら引き寄せて再構築させる。

剣の形が――戻っていく。

「よし、これで“再生反応”は止まった。使ってみ」

剣士が受け取った剣は、わずかに黒みを帯びていたが、
構えた瞬間、手応えが戻ってきた。

「……ちゃんと、斬れる!」

「完璧とは言わへん。でも、対応はしたで」

戦闘後、タンクがぽつりと呟いた。

「お前……火床もなしに、あそこまでやれるのか」

「素材の声が聞こえたら、ウチの仕事は始まってるんや。
 槌があってもなくても、手ぇを止める理由にはならん」

ヒーラーが小さく笑う。

「……ね。やっぱり、あんたはただの鍛冶師じゃないね」

坑道の奥、まだ見ぬ素材と敵が待っている。

けれど、仲間たちの目は、先ほどより確実に焔を“戦力”として見ていた。

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