玉京から東へ外れた山間部――“霧爪の廃坑”。
かつて鉱石を掘っていたらしいが、いまはダンジョン化しており、
希少素材と得体の知れぬ魔物が潜む、危険な迷路と化していた。
焔たちは、その調査依頼を受けて、坑道に足を踏み入れる。
「見たことない鉱脈……色、変わってる。これ、腐ってんのか?」
アーチャーが岩肌に目を凝らし、剣士がその一部を刃で叩く。
キィ……ン……
金属音にしては、どこか軋むような響き。
焔はしゃがみ込み、指先で鉱石を撫でる。
「これは……“蝕鋼《しょくこう》”やな。生きとる金属や。
掘り出した後も成長して、周囲の魔力を喰うんや」
「喰うって……武器に使って大丈夫なのか?」
「加工が追いつかんと暴走する。でも、うまく使えば、“自己修復”する素材やで」
*
進行中、突如として出現する異形の魔物。
腐蝕の胞子をまとい、触れた武器を劣化させる性質を持っていた。
剣士の刃が、音もなく崩れる。
「嘘だろ……!? これ、さっき研いだばっかりだぞ!」
焔がすぐさま飛び出し、崩れた剣を回収。
「……こいつ、蝕鋼を食って育った魔物やな。素材も武器も、片っ端から喰い散らかすやつや」
「どうする!?」
「ちょっと時間くれ。槌は振らへん……火床もない。
けど、素材と対話する時間さえあれば、なんとかなる」
焔はその場にしゃがみ込み、蝕鋼のかけらと崩れた剣を見比べた。
「お前、まだ“芯”は生きとるな……」
指先で金属を撫で、呼吸を合わせる。
シュゥゥゥ……ッ
魔力を送り、蝕鋼の“喰う性質”を逆手に取り、破片同士を自ら引き寄せて再構築させる。
剣の形が――戻っていく。
「よし、これで“再生反応”は止まった。使ってみ」
剣士が受け取った剣は、わずかに黒みを帯びていたが、
構えた瞬間、手応えが戻ってきた。
「……ちゃんと、斬れる!」
「完璧とは言わへん。でも、対応はしたで」
*
戦闘後、タンクがぽつりと呟いた。
「お前……火床もなしに、あそこまでやれるのか」
「素材の声が聞こえたら、ウチの仕事は始まってるんや。
槌があってもなくても、手ぇを止める理由にはならん」
ヒーラーが小さく笑う。
「……ね。やっぱり、あんたはただの鍛冶師じゃないね」
坑道の奥、まだ見ぬ素材と敵が待っている。
けれど、仲間たちの目は、先ほどより確実に焔を“戦力”として見ていた。