舗装の甘い街道を、焔たちは五人で歩いていた。
焔は先頭から少し離れた位置で、道端の土を蹴りながら歩いていた。
背中には、銀に光る千王槌と、いつもの工具袋。
旅の荷物には見えない重さを、当たり前のように背負っている。
「しかし……ホントに来てくれたんだな」
アーチャーが背後から声をかけると、焔は肩越しにだけ返す。
「来てしもたからには、ちゃんと叩くで。覚悟しとき」
「へへ、頼もしいね」
会話はそれっきり。けれど、少しだけ距離が縮まった気がした。
*
街道沿いの森の入り口。
野営地に選ぼうとしていた場所で、獣の唸り声が響く。
「群れてる……中型の魔獣か?」
「囲まれる前に、数減らしておくぞ!」
剣士とタンクが前に出る。
焔は咄嗟に火床の素を取り出し、木陰で仮設の鍛冶場を組み始めた。
戦いの最中、ヒーラーが焔の横に座り込む。
「……さすがに、こんなところで鍛冶なんて無理しないでよ」
「せやけど、壊れたらすぐ叩かなあかんやろ。
“使える状態”であり続けさせんのが、ウチの役目や」
「……なんか、もうちょっと自分を大事にして?」
焔は一瞬だけ手を止め、ヒーラーを見た。
「ウチは道具ちゃう。鍛冶師や。せやから、叩くとこには立っときたいんや」
ヒーラーは、ちょっとだけ目を細めたあと、
「うん、分かった」と静かに笑って、再び戦線を支えに戻っていった。
*
戦闘が終わり、倒れた魔獣の死骸を前に、タンクが汗を拭う。
「焔、あんたの槌音、戦闘中ずっと聞こえてたよ。……なんか、不思議と落ち着いた」
「そりゃよかったわ。槌が鳴ってるうちは、まだ戦えるいうことや」
「……そういう考え方、嫌いじゃない」
ポツリと呟いたタンクの声に、アーチャーと剣士が笑った。
こうして少しずつ、焔は“ただの鍛冶師”ではなく、
この五人の“仲間”として、馴染んでいった。
次の目的地は、鋼炎大陸の中心――玉京。
大都市での補給、そして新たな任務が彼らを待っている。
その前に、もう少しだけ、道の音を聞いていこう。