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第11話「魂の刃で討て」

夜明け前、ダンジョンの最奥。  そこに現れたのは、黒鉄の鎧をまとった異形の魔物だった。  四肢は人間のようでありながら、顔は仮面のような無機の板に覆われている。  巨大な刃を両手に持ち、無音のまま迫るその姿に、焔は眉をひそめた。

「来るで」

その一言が、戦闘の合図になった。  剣士が前へ踏み込み、斬撃を放つ。  アーチャーが狙撃で援護し、タンクが正面で構え、ヒーラーが後方で支援を始める。

焔は構えず、ただじっと見ていた。  それぞれが、迷いなく動いている。  焔が何か言わずとも、自分の叩いた武器を信じ、振るっていた。

剣の動きは、刃返によって軽く、正確。  弓は癖なくしなり、矢が風のように走る。  盾は衝撃を斜めに逸らし、揺れずに受け止めた。

焔の視界に、武器の“響き”が重なる。  残響視。  それは、鍛冶師の耳と目にしか見えない、武器の“命の音”。

──まだ、持つ。  ──まだ、戦える。

だが。

タンクの盾が、ひび割れた。  刃が、剣士の構えを押し返した。  そして、魔物の両手の刃が、空気を裂いた瞬間──

焔が動いた。

素早く盾を引き取り、千王槌を構える。

「今、叩く!」

ガァンッ!!

一撃。  槌の音が、火床もない戦場に響く。  斬られかけていた盾が、刃の衝撃を受け止め、揺れずに踏みとどまった。

アーチャーが一歩前に出て、矢を放つ。  ヒーラーが魔力を注ぎ、回復が間に合う。  剣士が剣を振り上げる。

「いけッ!!」

剣が、魔物の仮面を割った。  砕けた破片が飛び散り、魔物が断末魔の叫びをあげて崩れる。

静寂。

焔は、ゆっくりと千王槌を降ろした。

「──終わり、やな」

誰も、武器の状態を確認しなかった。  誰も、焔に「大丈夫か」とも聞かなかった。

全員が、“焔の武器なら大丈夫”だと信じていた。  それが、当たり前になっていた。

焔は、満足げに頷き、小さく笑った。

──魂を打つ。  その意味を、ようやく全員が理解し始めていた。

 

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