錬火の山々を背に、街道を行く焔たちの影が長く伸びていた。
戦いは終わり、次の町を目指す道中。空は穏やかに晴れ渡り、風は夏の終わりを運んでくる。
ふと、前を歩いていたヒーラーが立ち止まる。
「──あれ、あそこに誰かいる」
視線の先、街道脇の石碑にもたれかかるようにして、一人の使者が立っていた。
その衣には、王都ギルドの紋章。手に持つのは、封蝋のついた重厚な封筒。
焔がその場に立つと、使者は一礼し、言葉を告げた。
「鍛冶師・焔殿。これは王都よりの召集状。
玉京ギルド本部より、あなたの技術と働きに、正式な招集がかかっております」
封筒を受け取る手に、微かに力が入る。
王都──玉京。全ての職人と冒険者の頂点が集う、大陸の中心。
仲間たちが、次々に焔を振り返る。
「……すごいな」
「本当に、国中に名前が届いたんだな」
焔は封を切らずに、そのまま視線を遠くへ向けた。
旅を続ければ、もっと多くの武器と魂に出会える。
けれど、玉京に行けば、鍛冶師として、大陸全土にその力を振るえる。
どちらが“正しい”かなんて分からへん。
けど──
焔は、ふっと笑う。
「──まだ、ウチの槌は鳴り止んどらん。
せやから、このまま進んだ先で、また決めたらええ」
仲間たちも、それに応じて歩き出す。
封筒はまだ、焔の腰のポーチの中。
焔の槌はまだ、熱を帯びたまま。
その響きが止むのは、もっと先の話になるだろう。