クエストを終えた帰路、焔の頭の中は静かやった。
けど、心の奥底で、ずっと小さな火種が燻ってた。
それは――“打ち終えた後の、空虚さ”。
仲間たちが、手にした武器で成果を出すたびに、
焔の胸にはひとつの想いがくすぶるようになっていた。
「──このまま、ウチはここにおってええんか?」
工房に戻った翌朝。
ギルドからの正式な依頼書が焔の元に届けられた。
《冒険者パーティ「灰色の鋭鋒(グレイエッジ)」は、鍛冶師・焔の同行を要請する》
鍛冶村・錬火の代表者として、共に旅をし、
装備の整備と戦闘支援を担ってほしいという内容だった。
焔は無言のまま、その紙を炭の上で焼いた。
燃やしてしまったんじゃない。ただ、“一回、真っさらにする”ために火にくべた。
工房の奥。静まり返った棚の前。
六本の神槌が、まるで焔の答えを待っているように沈黙していた。
「……なぁ、お前ら。ウチ、行ったほうがええんやろか」
返事はない。ただ、ひとつだけ、
千王槌の柄が、微かに“ギィ”と揺れたように見えた。
焔は笑った。
「……せやな。叩きたいんや。もっと。素材も、人も、未来も」
その夜。村長に話をつけ、村の鍛冶たちに囲まれながら、
焔は黙って深く一礼した。
誰も止めなかった。
止められへんのを、村の全員が分かっていた。
焔は荷をまとめる。重たい鉄くずのような思い出を、ひとつずつ背負いながら。
そして出発の朝、村の外れ――火釜杉の前で立ち止まった。
焔は振り返らず、呟いた。
「行ってくるわ。叩くべきもんがある。
せやから……ウチは、前に出る」
神槌を背負い、焔は歩き出す。
己の“仕事場”を、村の鍛冶場から、戦場へと変えるために。