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第6話「六槌の鼓動」

敵の群れを切り崩しながらも、戦況は次第に乱れ始めていた。
体力の消耗、魔力の枯渇、装備の磨耗。どれもが限界に近い。
焔は一歩退き、神槌――六本すべてを前に並べる。

それぞれの槌が、微かに光を帯びて脈動している。
まるで、打たれる瞬間を待つ鼓動のように。

焔は小さく息を吐き、工房での所作と同じように槌を構えた。

「……ほな、響かせたるかいな。ウチらのリズムを」

最初に振るわれたのは《響槌》。
軽やかな金属音が空気を裂き、パーティの耳を打つ。

チィィィン──!

直後、アーチャーの身体が軽くなる。
呼吸が合った。視界が冴えた。仲間の動きが手に取るように分かる。

「今の……何だ?」

「脳に……響いた……?」

続いて《嵐槌》が鳴る。

カン、カン、カンッ!

連打される槌音が、戦場にテンポを与える。
全員の動きが自然に早まり、攻撃と防御のリズムが合っていく。

「動きやすい……? いや、違う。スキルの回転が早い……!」

《蛍槌》の一撃は、タンクの背を叩いた。

ゴンッ!

盾に重さはある。だが、構えがブレない。
踏ん張りが利く。前に出られる。

「姿勢が崩れない……!?」

《墨槌》の一振りで、アーチャーの背の影が揺れ、矢筒の中身が再装填された。
ロッドも浮かぶ。影が道具を“取り出す”。

「武器が……勝手に……」

《涼槌》がヒーラーの足元に触れ、澄んだ音が響く。

シィン……ッ

それだけで、ヒーラーの顔色が明るくなる。
消耗した精神が、一時的に冷やされ、集中力を取り戻す。

そして最後に《千王槌》。

ズドォン!!

その一撃は、まるで戦場全体の空気を入れ替えるような重低音。
敵の動きが、一瞬止まる。

「……デバフが、消えた……?」

焔は六本の神槌を交互に振るい、戦場に音の律動を刻む。
その音はただの鍛冶ではない。誰もが、無意識にそのテンポに従っていた。

「なんだこれは……鼓動だ。まるで……戦場の心臓みたいだ……!」

六つの槌が交互に打たれ、その音が味方の力を引き出し、
敵の勢いを削ぎ、仲間の士気を押し上げる。

そして誰かが呟いた。

「──鍛冶師が……戦場の指揮を執っている……」

焔は一言だけ、静かに笑って呟く。

「うちらはな、叩くんが仕事や。それが剣でも、心でも、地面でもやな」

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